Mercedes-Benz 320CE Cabriolet
(A124)
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W124シリーズの中でも
別格だったカブリオレ
今でもそうだがメルセデス・ベンツは昔から成功者のシンボルとして強い憧れの存在であった。バブル崩壊後もメルセデスは日本中のユーザーに広く受け入れられ、我々の身近な存在となっていった。そうした時代背景にあって、まさに実用的な高級車でありメルセデスの優等生として今なおコアなユーザーに支持され続けるのがW124モデル。その中でも、当時としては大変珍しい4シーターオープンのミディアムクラスカブリオレ(A124)が誕生したことは大きな話題となった。1993年新型DOHCエンジンを搭載したミディアムクラスのオープンカーとして販売されたのが、ここで紹介する320CEカブリオレである。
新車当時の販売価格は、同じクラスの320Eセダンが770万円であったのに対し、320Eカブリオレは1120万円と格の違いを見せつけていた。そのため一般のユーザーには手が出しにくく、ソフトトップのみの設計でハードトップがなかったことを揶揄して「屋根がないのになぜ高い」と冗談が飛び交うほどだった。そのためかは分からないが販売台数は極端に少ない。
だがこのソフトトップは実に優秀で、パラシュートと同じ素材が使われており耐久性にも優れている。通常使用で破れることはほとんどない。新車から30年が経過した今でも幌が破れていないことを見れば素材の良さが分かるだろう。天井ライナーは三層構造で、クローズド時にはクーペ並みの静粛性があり、ソフトトップであることを忘れてしまうほど。ソフトトップのウインドーには熱線入りのガラスが使われおり、ビニール質のスクリーンとは違って劣化が少ない。そのため経過年数を気にする必要はない。オープン時の幌の収納もスッキリと収まっている。トランクスペースは余裕があるとは言えないまでも、今でも十分に使えるレベルだ。ソフトトップの開閉作業もロックレバーを除けば全工程がボタン操作ひとつでできる。開閉システムはSL(R129)とほぼ同じだが、SLのようにハードトップが用意されているわけではないから、オープン時どこかに保管する必要もない。今でこそバリオルーフの開発で、ハードトップは当たり前となっているが、急な天候の変化でも短時間で開閉でき、いつでもオープンとクローズができるという利点は当時としては画期的だった。
往年のメルセデスらしい
作りの良さを感じる
A124はもともとボディ剛性の高いW124をさらに補強しているため、車両重量は320CEクーペが1560㎏であるのに対し320CEカブリオレは181㎏と250㎏も重い。エンジンは直列6気筒DOHCエンジン(通称104エンジン)で最高出力225ps、最大トルク32.3㎏‐mと十分なパワーを発揮してくれる。
乗ってみてすぐに感じることは、ボディのきしみをほとんど感じないことだ。まるでセダンの静粛性をそのままにオープンの解放感を味わえるから心地よい。市街地走行や高速走行でも風切り音が少なく風の巻き込みも少ない。またリアシートのハイバックレストは電動でヘッドレストを立ち上げることができ、乗員の安全を確保している。その気になればシートヒーターやエアコン暖房を使いながら冬でもオープンで走ることも苦ではない。全長とホイールベースはセダンと比べて85㎜短いが、後部座席のスペースは大人が乗っても十分に座れるから4人乗りオープンカーの醍醐味が味わえるのだ。
本誌が創刊された2002年当時でも中古車市場でこのカブリオレを見かけるチャンスはそれほど多くはなかったが、それでも販売価格は200~300万円前後と手ごろであった。走行距離も少なく、過剰にメンテナンスされた程度の良いクルマを手に入れることもできたのだ。しかしあれから20年が経過した現在では、市場で見かけることはほぼ無くなりつつあり希少なモデルとなっている。デビュー年から考えれば走行距離も20~30万㎞走行していてもなんら不思議ではない。新車から30年が経過していることを考えれば、プラスチック類やゴム類の劣化はあって当然であろう。それでも今なお色あせることのないオーラを放ち強烈な存在感をアピールしている。その佇まいは眺めているだけでも人の心をワクワクさせ幸せにしてくれる不思議な魅力に溢れている。取材車はソフトトップシリンダーがオーバーホールされており、さらにアイディングでメンテナンスアップしてくれるというから安心だ。古き良き時代の大切な財産であり、そして価値あるW124として、次の世代に残しておきたい1台である。