TOP > 記事 > トラブルは自力で回避!緊急脱出マニュアル②

2022.04.13

トラブルは自力で回避!緊急脱出マニュアル②

 いかにメンテナンスが万全でも、起こる時には起こってしまうのが緊急トラブルというもの。そんな突発ケースの代表的なものをピックアップして、その対処法をまとめてみた。

ピンチは突然やってくる!?                                         定番トラブル超速解決マニュアル

01.バッテリーが上がってしまった

一人でも対処できるポータブルバッテリーを持っておけ!

 バッテリーが上がってしまった場合は、ジャンプケーブルを使ってプラスとプラス、マイナスとボディアースという組み合わせで電気を他車からもらえば、ほとんどの場合でエンジンは始動できる。問題は、救援してもらえるクルマがいない場合や、オルタネーターが原因でバッテリー上がりを起こしてしまった場合だ。そんな時に有効なのが、近ごろリーズナブルな商品も多く出回っているポータブルバッテリー。これがあれば、救援を必要とせずにエンジン始動が可能になり、さほど長時間でなければ、オルタネーターが機能していない場合もこれを繋いでおけば走行することが可能。予備の電池と言った感覚で、常に持っていると安心だ。

ジャンプケーブルは、プラスとプラス、マイナスとボディアース(救出される側)と覚えておこう。これを外す場合は、必ずマイナス側から外すこと。ショートを防ぐためだ。
バッテリー上がりとオルタネーターがダウンした場合にも有効なアイテムが、ポータブルバッテリー。交通量の少ない遠方へ一人で出かける場合など、持っていると安心だ。

02.タイヤが側溝に落ちてしまった

無垢材の板が2枚あれば脱輪から脱出可能

 故障ではないが、側溝に落ちるというアクシデントは、いつ起こっても不思議ではない。ただし、道路整備の行き届いた都心部では側溝には蓋がある場合がほとんどなので大丈夫。注意すべきは地方の山岳路などで、交通量が少ないところほど側溝に蓋がない可能性が高いと思った方が良い。
 落ちてしまった場合の対処は、理想は大人数で車体を持ち上げて脱出すること。これが一番素早く、クルマを傷めにくい。次に一人で脱出する方法としては、落ちた車輪側をジャッキアップした後、側溝のタイヤの下に、組み合わせた二枚の板を置く方法。エンジンをかけて板を上れば脱出できるが、板が柔らかいと車重に耐えられず折れて失敗に終わる。合板ではなく、厚みのある無垢材を車載しておく必要がある。

側溝に落ちてしまった場合は、硬い二枚の板があれば脱出できる。1枚を側溝に対して垂直に、もう1枚を側溝に落として坂道を作れば、一人でも脱出できる。
使用する板は、堅い無垢材がベスト。写真は合板で、これを使用して側溝からの脱出を試みたのだが、板が車重に耐えられずに折れてしまい、失敗してしまった。
脱輪部の車体側をジャッキアップし、タイヤの下に板を置けるかどうかが脱出の大きなポイントとなる。不安定なジャッキアップとなるので、細心の注意が必要だ。

03.タイヤがパンクしてしまった

素早く安全に対処するならパンク修理剤だが……

 最近増えつつあるランフラットタイヤは別にして、パンクはどんなクルマでも、いつでも遭遇する可能性のあるトラブル。この場合は、安全なところでスペアタイヤへ交換するのが一般的な対処法だ。この時一番やっかいなのが、ホイールボルトを緩める作業。硬く締まっているものは、純正の車載工具では緩まないこともある。理想は、長めの柄の専用レンチを携帯しておくと、タイヤの脱着は容易になる。
 手軽に素早くパンクを解決するには、パンク修理剤が効果的。ただしこれを注入すると、その後タイヤを修理によって使うことができなくなる場合も多い。状況を見て注入するか判断するべきだということは知っておいた方が良いだろう。

スペアタイヤに交換しようとしたが、ホイールボルトが硬くて緩まないというのはよく聞く話。やや長めのレンチとソケットを携帯しておくと、タイヤの脱着は非常に楽になる。
パンクの穴が小さい場合は、ポータブルタイプのエアコンプレッサーでエアを入れれば、短距離ならタイヤ交換せずに走行することが可能。安全な場所までの緊急手段としてお勧め。

04.ライトバルブが切れた

予備を携行するのが最善のバルブ切れ対策

 ライトバルブが切れて困るのは、代用の利かないウインカー。その他は左右に2つあるため、万一片方が切れても、もう片方が点灯しているので走行上は何とかなる。ただし、そのままで公道を走ると整備不良となるので、早急なバルブ交換が必要だ。ヘッドライトバルブが切れた場合は、フォグランプで代用するか、ハイビームを点灯させて、対向車がまぶしくないようにライトの上下をテープでマスキングする。こんな荒技を使わなくても良いように、ライト類のバルブは予備を携行しておくのが理想的な対策だ。

05.冬にありがちなトラブル

凍結によってドアとカギが開閉できない場合

 冬にありがちなトラブル対策も忘れられない。寒さによる凍結で鍵穴が回らないという場合には、凍結防止剤をカギ穴に吹き付ければ解決できるはず。次にドアが開かないというのも、ゲレンデの駐車場などでは生じやすいケース。この場合、無理に開けるとウェザーストリップを破いてしまう可能性があるので、最も開きやすいドアからアクセスし、エンジンを始動させる。ヒーターで室内を暖めれば、ドアの凍結は自然に解決できる。もっとも、事前にラバーケミカルを塗布しておけばドアが凍結して開かないというトラブルは防げる。

06.うっかりガス欠してしまった

ガス欠から脱出するには最低5ℓの燃料が必要になる

 ガソリン高騰時には続出するというガス欠。早めに給油さえすれば回避できるアクシデントだ。車種によっても異なるが、給油警告ランプが点灯するのは残りの燃料が10ℓくらいという場合が多い。8㎞/ℓ走るクルマなら、点灯してから約80㎞は走行できることになる。案外走れる距離は長いのだが、最寄りのガソリンスタンドで早めの給油が最善策と言える。
 いざガス欠を起こすと、最低でも5ℓの燃料を入れないと燃料ポンプがそれを吸い上げてくれず、エンジンがかからない。またこの時、燃料ポンプへのダメージも大きい。ガソリンスタンドで携行缶を借りて5ℓ以上の給油を行なうか、ロードサービスを待つのが最も無難な解決方法だ。

給油警告灯は、残りの燃料が10ℓ前後で点灯することが多い。自分のクルマの燃費と照らし合わせて、点灯してからどのくらい走れるかを計算しておきたい。
ガス欠を起こすと、最低5ℓは燃料を入れないとエンジンを始動できないことが多い。燃料添加剤などを持っていたとしても、1ℓくらいの補給では始動するのは難しい。

07.正しいロープけん引の方法とは

けん引ロープを使う時はたるませないのが鉄則

 まずは引っ張られる側から紹介する。けん引フックがねじ込み式のクルマはこれをキッチリ差し込むこと。またフックにカバーがあるなら、それを開けてからけん引ロープを装着する。けん引される場合は、常に軽くブレーキを踏んでおき、ロープがたるまないようにする。けん引ロープがたるんでいると、先頭のクルマが加速する度に過度の衝撃がロープに加わり、耐久性が著しく低下し、切れやすくなってしまう。エンジンがかからない場合は、パワステやブレーキのアシスト機構も利かなくなるので、ハザードランプを出しながら、可能な限り低速で走行すること。
 引っ張る側は、MTならなるべく低いギアを選択すること。発進する時はけん引ロープのたるみがなくなるまでゆっくりと動きだす。ロープのたるみ調整は、基本的にけん引される側が行なう仕事だが、けん引する側は動き出す時に十分注意を払う必要がある。曲がる時は可能な限り外側を大回りで走行する。

けん引フックをバンパーにねじ込むクルマや、カバーを開けてロープをフックにかけるなど、車種ごとの正しいけん引方法を守らないと、クルマにダメージを与えてしまうこともある。
写真のけん引ロープは、伸縮性があり多少たるませても大丈夫なタイプで、初心者でも使いやすい。伸縮しないタイプは、できるだけたるませずに使用すること。
けん引される側は、常に軽くブレーキをかけておき、けん引ロープに一定のテンションがかかり続けるようにコントロールする。前後のドライバーで息を合わせることが重要だ。
 

持って安心
積んでおきたい予備パーツ

 あらゆるトラブルやアクシデントに対応するには、それに適した装備やパーツを携帯しておく必要がある。しかしそんなに頻繁に止まってしまうものでもないので、出番の少ないグッズを山盛りクルマに積んでいたら燃費が悪くなる。安心感と経済性を両立させるには、最低限の脱出グッズをチョイスする必要があるのだ。
 古めのクルマであれば、トラブルが発生しやすい部分を中古パーツでも良いので常備しておくと安心。けん引ロープやジャンプコードといったグッズよりも、代用の利かないパーツを重視して持っていたい。けん引ロープやジャンプコードなどは、ほかのクルマから借りられる可能性が高いのだ。だからと言って、例えばプラグコードを気筒数分携帯する必要はない。一番長いコードを1本持っていれば、とりあえずなら何番のプラグにでも使用することができるのだから。

トラブルを起こしやすいパーツは、定期的に交換し、古いものをクルマに積んでおく。リレー類やプラグコードなどが代表的だ。

無理は禁物!
自力脱出が最善とは限らない

 トラブルを自分で解決することができれば、男の株が上がる。しかし、それを試みて失敗すると、まるで今の世界経済のごとく急落しかねない。つまり、無理は禁物だ。
 例えば、電子制御パーツに異常が生じた場合などは、むやみに直そうとせず素直にロードサービスを待って修理工場に持ち込むのが正解だ。直すつもりが逆に壊してしまう可能性が高いためである。
 同様に、高年式モデルの場合も、むやみに手を出さない方がいい。バッテリーが上がったからといってジャンプコードで電気をもらうこともお勧めできない。電子機器は非常に複雑でデリケートなので、万一ショートでも起こしてしまったら、高額な修理費用が必要になる可能性が高いためだ。新しいクルマほど、トラブル時の対応は豊富な知識のあるプロに委ねることをお勧めする。

コンピュータ系の異常を示す警告灯が点灯した場合は、修理工場へ直行してプロの判断を仰ぐのが最も賢い対処法である。