✔レースでの実績をフィードバック
✔ターボ専用のボディを採用
✔リアブレーキのドラム径を拡大
レースエンジンで公道を走る、刺激的で贅沢な時間
マルニターボは欧州車初のターボチャージャーを積みその名を歴史に刻んだわけだが、誕生に至るまでの経緯もまた我々クルマ好きの心を捕らえて離さない。マルニターボに搭載されたエンジンは、BMWターボというコンセプトモデルが72年に発表される前から開発が進んでいた。60年代のグループ5のツーリングカーレースでは、2002tikというモデルに直列4気筒+KKK製のターボチャージャーを積んでレースに挑み、見事タイトルを獲得。市販化に当たって改良はされているものの、基本的にはそのエンジンがマルニターボに搭載されたのである。
レースでタイトルを獲得したエンジンが搭載されるという、E30型M3のような生い立ちを持つわけだ。単純に、ベースとなる2002tiiのエンジンにターボを搭載したわけではないのである。それを公道で走らせることができるのだから、これほど刺激的で贅沢なことはないだろう。
乗用車に初めてターボを搭載したのは62年製のGMオールズモビルF85とシボレー・コルベアだが、これらはオプション設定。モデルバリエーションとしてターボが搭載されたのはこのマルニターボが最初なのである。スーパーカー時代を知る人なら、ターボ=高性能の証。その元祖がマルニターボなのだ。
マルニターボの市販化にあたって、エンジン本体だけでなく数多くの変更が加えられた。ベースである2002tiiよりもラジエターの容量を増やし、オイルクーラーも標準で装備。メカニカルインジェクションはグーゲルフィッシャー製で、これはエンジンの動力によってポンプを作動させ、各気筒の吸気ポートに噴射させるというものだ。燃料タンクの容量が増やされたことで、トランクルームはベースである2002tiiよりも若干狭くなっている。足回りはフロントがストラット、リアがセミトレーリングアーム。ブレーキはフロントがベンチレーテッドとなり、リアはドラム式のままだったが、ベースモデルに比べてドラム径を拡大し強化されている。タイヤは5.5Jの185/70HR13で、オプションで6J×13のアロイホイールも用意。LSDが装備されたことも特長的なポイントだと言えるだろう。
ボディはひと目見れば分かるようにターボ専用となっている。バルコムトレーディングによって輸入された日本仕様のオーバーフェンダーは、パテ埋めされたスチール製となっている。欧州仕様はビス留めされているのが特長だが、日本仕様は規制の問題でフェンダー回りを加工する必要があったため、このような違いがある。だが、今回の取材車のように、日本仕様であってもあえてビス留めに変更するケースも多いようだ。オーナーのこだわりの部分だと言えるだろう。
日頃のメンテだけでなく、本格的なレストアが必要
前方を走るクルマにも存在感をアピール
Detail Check
パーツや各部の作りに至るまで細かく見てみる!
ボディからエンジンまで
専用品で強化した別モノのマルニ
パワーアップに合わせてブレーキも強化
グーゲルフィッシャー製のメカポンを搭載
Restore & Maintenance
レストア&メンテナンスのポイント
パーツは心配ないがボディのサビには注意
歴史的名車であるマルニターボであるが、1975年製のクルマ。エンジンやミッションのオーバーホール、ボディのサビ対策など本格的なレストアが必要となる。