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高品質なリビルドATを提供するファクトリーZF社が唯一公認する デルオートのOHに密着①

 ATにトラブルが発生した時に頼りになるのがリビルドだが、高価なものだけに信頼できるショップに任せたい。ここで紹介するのはドイツのミッションメーカー、ZF社が日本で唯一公認するサービスファクトリーであるデルオート。そのオーバーホールについてレポートしていこう。

ZF公認ならではのAT専用テスターを完備

 確実なオーバーホールを行なうためには、正しい診断が重要になる。デルオートでは試乗や作動確認、ATFの状態などのチェック以外に、特徴的な診断方法があり、それがAT専用の診断機を使うこと。これはATに備わる専用のカプラーに繋ぎATの状態を確認できるもの。ATの異常履歴や点検項目は非常に多く、この専用テスターだけでトラブル原因を把握できることも多いという。
 トラブル原因が確認できたら、ATが分解される。ATの頭脳ともいえるバルブボディ本体の異常だけならAT本体を降ろさずに済む場合もあるが、内部のクラッチやシール類の交換などが必要と判断された場合は、AT本体の脱着を行なう。
 降ろしたAT本体はキズや摩耗状態などを入念にチェックしながら分解され、再使用するパーツは徹底的に洗浄される。といっても、電子制御式のATへとシフトされてからは、再使用するパーツは減少傾向にあるとのこと。例えば、トルクコンバーター。デルオートでも専用の洗浄マシンや分解洗浄を行なうこともあるが、現在は多くの場合で新品に交換しているそうだ。またバルブボディも同様で、ここにトラブル原因があった場合は丸ごと交換するのがセオリー。スプリングやチェックボールなどで油圧経路を調整していた機械式ATと異なり、電子制御式ATはその役目をアクチュエータの細かい制御によって行なっており、それらの交換はできない。よってバルブボディをまるごと交換するのがセオリーとなっている。
 トラブル原因の確認と洗浄後は、ZFの純正パーツを使用して組み付ける。シールやパッキン類に新品パーツを使用することはもちろんだが、ディスクプレートなどの消耗品全てを新品へと交換。また、ディスクプレート等の組み付けは、各ATごとに定められたクリアランスに合わせる必要がある。車種やグレードによってクリアランスの設定値は変わり、その数値もZF社公認のファクトリーだから分かること。そして組み付け後はATのベンチテストを行ない、実際にエンジンで動かし作動確認とCPUの初期化やエラーコードを消去する。こうして完成したATは、1年間および走行距離5万kmの保証が付いてユーザーの元に渡るのである。

AT専用のテスターを完備している!
ZFのAT専用診断機をAT本体の脇にあるカプラーに接続しトラブル原因を探る。AT専用テスターなので、一般的な診断機よりも細かい点検を行なうことが可能。ZF公認ファクトリーだから持つことが許される診断機である。
ATオーバーホールの模様をダイジェストでお届け!
デルオートで行なわれるATオーバーホールでポイントとなる部分を紹介。オーバーホールで重要なのはパーツの見極め。どのようなコンディションだったのかをチェックしながら、入念な洗浄、調整、正確な組み付けを行なう。組みあがったら専用のテスターで作動チェックしていく。
トラブル原因として多いのが、油圧経路に収まるガイド樹脂の破損。これが原因で適正な油圧を確保できなくなり、油温やAT内部の温度上昇を招く。結果としてディスクプレートが焼けてしまい、ATの作動不良を起こすことに繋がるのである。このディスクの焼け具合も、トラブル原因を探る方法のひとつとなっており、重要な点検項目である。
(上)電子制御式ATに備わるバルブボディ。ATの制御を行なうCPUはここに収まっている。比較的多いトラブル事例はハーネスの断線など。アクチュエータなどの作動確認テスターも持っているが、トラブルが生じた場合は新品への交換がセオリーとなっている。(下)高温にさらされることも多いトルクコンバータ。内部のフィンが破損したり汚れの蓄積などが多いため、洗浄だけでは性能回復が見込めない場合も多い。したがって、このトルクコンバーターも新品に交換する場合が多いとのこと。
パッキンや樹脂製のオイルパンなどは新品に交換される。このような細かい消耗品もZFの純正を使用することで、信頼性の向上に繋がっている。ディスクプレートやドリブンプレートなどの消耗品も全て新品になる。この時、厚みの異なるディスクを使用するなどして、規定のクリアランスに合わせて組み付けを行なっている。
ATFの量を考慮して発送されるリビルドAT
ATFのレベルゲージがない昨今のZF製AT。リビルドとして発送する場合は、ATFクーラーの部分を考慮してATFを充填しており、装着後に余分なATFを溢れ出させて調整するよう指示している。
ミッションを組み付けた後はATのベンチテスター(写真上)に装着し、エンジンを使って作動確認を行なう。このベンチテスターは、FFとFRの両方のATに対応している。ここで異常がないことが確認されたら、CPU診断機を繋ぎ、再び確認すると同時に、エラーコードの消去やデータの初期化作業を実施する。
 
 
取材協力:デルオート

ATリビルドのスペシャリスト集団であるデルオート。都内のみならず、全国から修理依頼が殺到している。これまでの確実な整備こそが信頼の証。

世田谷工場
● 所在地: 東京都世田谷区玉川3-4-2
● TEL: 03-3707-2841
● URL:http://www.delauto.co.jp/

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● 所在地:神奈川県厚木市金田1104-3
● TEL: 046-221-7300