イタリアのイソ社が販売していたイセッタのライセンス生産権をBMWが取得して、BMW流に仕上げたのがこのクルマ。斬新な設計と独特なデザインで世界中で大ヒットとなったバブルカーである。
独特な雰囲気を醸し出す
エクステリアデザイン
BMWイセッタ。ドイツが生んだマイクロカーと言いたいところだが、元々はイタリアのイソ社が生産していた小型車で、そのライセンス生産権をBMWが取得してBMWイセッタとして販売されたモデルだ。独特な雰囲気を醸し出すエクステリアデザインや斬新なパッケージングなど、確かにドイツ車というよりはイタリア車の雰囲気を感じさせる。
BMWイセッタとして販売が開始されたのが55年3月のこと。イソ社のイセッタは2サイクル単気筒エンジンを搭載していたが、BMWは自社の2輪車に搭載していた4サイクル単気筒エンジンに換装しパワーアップを実現している。自社製のエンジンならその構造について精通しているので、トラブル回避としても万全の策だったと言えるだろう。
モデルバリエーションとしては、まず245㏄のイセッタ250が登場。その後295㏄のイセッタ300が追加され、4輪タイプと3輪タイプを用意。4輪タイプはリアのトレッドが極端に狭いのが特長。3輪タイプは主に税制上の優遇が大きいイギリス向けとして輸出されていたことから右ハンドルが多い。このイセッタ300は世界中で大ヒットとなり、当時、経営難に陥っていたBMWを救ったのである。300の販売台数がピークに達した頃、更なるテコ入れとして、ボディや排気量などを拡大した4輪仕様の600を追加。このモデルは車名にイセッタが付かず単純に「600」と呼ばれる。
そしてイソ時代から続くもっとも特長的なポイントが、ステアリングやインパネごと開くフロントドア。普通のクルマではボンネットにあたる部分にドアのヒンジがあり、それをひねるとドアが開き、そのまま前から乗り込むことができるのだ。なんて斬新な設計なのだろう。現代のクルマでは絶対にあり得ない。ちなみにボディが拡大された600では乗車定員が4名となり、右のボディサイドにはドアが追加されている。
今回取材したBMWイセッタは60年式300の3輪仕様で、新車当時から人気が高かったモデル。内外装はレストアされており、シートや内張りなどに破れなどは見られなかった。塗装にもツヤがあり大切に保管されてきたことがうかがえるコンディションだ。要であるエンジンなどの機関面もきっちりと手が入っている。実際に撮影地まで自走してきたのだから、それなりの整備がされている証拠だと言えるだろう。きっちりとレストアされたクルマは、年式を感じさせないものだ。
今でも十分に通用するコンセプトと斬新なデザインはBMWイセッタの大きな魅力。熱心なフリークも多く存在し、自動車趣味としても十分に楽しめる味わいを持っている。
要である機関面にもきっちりと手が入っているイセッタ
希少なクルマゆえに心配なこと
イセッタ
気になるギモンを解決!
Q1. 今でもパーツは手に入るの?
A1. 消耗品は問題なく入手できる
世界中で高い人気を集めたクルマなので、部品の供給については心配は要らない。リビルト品などもあるので旧車の中でも維持しやすいクルマだと言える。今でも熱心に整備しながら維持しているファンが世界中にいるので情報が多いのも魅力。
Q2. 激安なクルマはやっぱりダメ?
A2. それなりの程度であることが多い
イセッタの年式になってくると中古車の流通量も少ないため、安いクルマはそれなりのコンディションであることが多い。安いクルマを買ってレストアしていくという楽しみ方もあるが、予算に余裕がないともう一台買えるくらいの費用がかかることも。
Q3. 3輪登録は税金が安いの?
A3. 自動車税が安くなるのがメリット
普通自動車としても登録できるBMWイセッタだが、3輪仕様なら、3輪登録することも可能。普通自動車の場合の自動車税は2万9500円だが、3輪登録にすると6,000円となる。ナンバーは後ろだけになるが、維持費の節約に繋がるのがメリット。
SPECIFICATIONS
全長 : 2280㎜
全幅 : 1380㎜
全高 : 1300㎜
ホイールベース :1500㎜
車両重量 : 340kg
燃料供給装置 : キャブレター
エンジン方式 : 4サイクル単気筒
総排気量 : 295㏄
最高出力 : 13ps/5200rpm
最大トルク : 1.9㎏-m/4600rpm
トランスミッション : 4速MT
乗車定員 : 2名