ドイツの戦闘機を作っていたメッサーシュミットが手がけた小型3輪車を発見! クルマ好きのみならず多くの人の視線を釘付けにする独特なデザインが魅力だ。今でも根強いファンが存在する名車である。
キャノピーを開けて乗り込む
戦闘機のような構造
ドイツの有名な戦闘機メーカーであるメッサーシュミットが第二次世界大戦後に作った小型車が、このメッサーシュミットKR200。ドイツの自動車メーカーというよりは戦闘機のイメージが強い同社だが、小型乗用車も生産していたのである。その歴史を簡単に振り返ってみると、53年に初期型として173㏄のKR175を開発。55年には排気量を191㏄に拡大した改良版であるKR200が登場している。日本へは芙蓉貿易によって輸入が開始されたのが始まりで、今回取材したKR200は150台ほどが上陸した。ちなみに、このKR200は64年まで生産が続けられ、総生産台数は4万2000台ほどと言われている。 エクステリアは戦闘機のようなボディラインになっており、リアが絞られた独特なデザイン。ドアはなく、キャノピーを開けて乗り込むところや前後1座の2人乗りというレイアウトも戦闘機そのもので、フロント2輪、リア1輪の3輪仕様になっている。リアに装着されたトランクもとてもオシャレで、新車当時の雰囲気を感じさせてくれるものだ。
リアに搭載されるエンジンはドイツ車フリークならお馴染みのザックス製で、空冷式の2サイクル単気筒となっている。最高出力は9.7psで最高速度は105㎞/hというスペックだ。このエンジンを4速MTで操れるのだからなかなか面白い。
ハッチを開けて運転席を覗き込むと、独特な形状を持つステアリング以外は非常にシンプルなデザイン。インパネにはスピードメーターやチョーク、アナログ時計しか装着されていないが、オプションでラジオを付けることも可能だった。
取材車である60年式KR200は、内外装からエンジンまでフルレストアされた車両。塗装の状態が良くとても1960年のクルマとは思えないほどのコンディションだ。インテリアもキレイなもので、シートの破れなどは全くない。もちろん見た目だけではなくエンジンも絶好調。借り出したショップから撮影地まで自走できるほどである。構造も非常にシンプルであり、操作についてもとくに気難しいということはない。マニュアルミッションのクルマに乗れる人なら問題はないだろう。普通に走っても80㎞/hくらいの速度は出るので、軽自動車に乗っているような感覚で運転できる。
実用性を求めるというよりは、自動車趣味を極めるクルマというのが現代におけるメッサーシュミットのポジションだと思う。中古車としての数が少ないことはもちろんだが、この独特なスタイルは街中での注目度も抜群。「知る人ぞ知るメッサーシュミット」という雰囲気が、所有する満足感を高めてくれるはずだ。
年式を感じさせない軽快な走りを披露してくれる
希少なクルマゆえに心配なこと
メッサーシュミット
気になるギモンを解決!
Q1. パーツは手に入るの?
A1. 機関面のパーツは心配なし
内装までオリジナルにこだわると入手するのは難しくなるが、シートなどは社外品を使って張り替えることが可能。機関面のパーツについては海外から入手できるし、構造自体がシンプルなので現代の技術を使ってカバーできるので心配は要らない。
Q2. 登録は軽自動車になるの?
A2. オート3輪登録だと税金が安い
メッサーシュミットはフロント2輪、リア1輪の3輪仕様なのでオート3輪として登録できる。普通自動車免許で運転でき、ヘルメットの着用義務はない。軽自動車として登録することもできるが、自動車税などの税金はオート3輪登録のほうが安い。
Q3. 高速道路は走れるの?
A3. 小さくても自動車なので走行可能
オート3輪でも軽3輪登録でも道路交通法では自動車として分類されているので、高速道路を走行することは可能。ステアリングがクイックであるため、速度が上がってくるとそれなりの経験が必要。高速道路はクルマに慣れてから走るようにしたい。
SPECIFICATIONS
全長 : 2817㎜
全幅 : 1250㎜
全高 : 1193㎜
ホイールベース : 2080㎜
トレッド(前): 1080㎜
車両重量 : 235kg
エンジン方式 : 2サイクル単気筒
総排気量 : 191㏄
最高出力 : 9.7ps/5000rpm
最大トルク : 1.53㎏-m/4000rpm
トランスミッション : 4速MT
乗車定員 : 2名