スピードメーターはケーブル式を採用
メーターケーブルは定期交換が必要な部品として知られていた
1990年代以降、スピードメーターは車速パルス信号を利用した電気式メーターが主流となったが、バブル時代のドイツ車にはまだ機械式メーターを採用しているものが多かった。駆動回転をケーブルによってスピードメーターの裏まで引き込むという方式で、チューブの中で回転する軸によってメーターの針を直接的に駆動しているというのが特長。
このため、当時はスピードメーターケーブルの交換は定番のメンテナンスメニューとして知られていた。車体の下側とインパネを繋いでいる長いケーブルの交換は大変なため、モデルによっては上下で分割式を採用しているものもあった。またアクセルワイヤーと同様、左ハンドルを基本に設計されているドイツ車では、右ハンドル仕様ではスピードメーターケーブルも延長されている場合が多く、トラブルの発生が多い傾向にあるようだ。
この機械式メーターに多いトラブルが、スピードメーターの針が上下に大きく振れるようになるという症状。これは多くの場合、スピードメーターケーブルの交換で解決する。ただ、メーター本体の内部でも回転を多くのギアを使ってそのまま針に伝えているので、スピードメーターユニット本体に問題があることも。こういった場合でも、メーターの専門家に分解して調整してもらえば、丸ごと交換することなく修理が可能というのが機械式メーターのメリット。バブル時代のモデルではギアに樹脂を使用するようになったクルマが多かったため、部品を調達できる修理屋さんに頼む必要があるようだ。
●●●トランスミッション部分からスピードメーターケーブルをメーターの裏まで引き込んであるのが機械式メーター。チューブ状の保護材の中心には回転可能な芯が通っていて、これが速度に比例して回転するというシンプルな仕組み。当然、摩耗などによってある程度使用すると交換が必要になる、要メンテナンスなパーツである。
ガス抜けしやすいエアコンの冷媒系
当時のエアコンは特定フロンR12仕様。後にこのガスは生産が禁止されたため、より粒子の細かい134aで代用可能にするレトロフィットが頻繁に行なわれたが、コンプレッサーオイルを全量134a対応のものに交換するなどのキッチリとした対策をしておかないと、様々なトラブルの原因となった。また当時はホースやエバポレーターなどの構造的にも弱かった。
モグラ叩き状態が続くエアコン修理全体的にキッチリ直すのが大切
リキッドタンク内部の活性炭がボロボロになって冷媒系に回り、エキスパンションバルブを詰まらせる。エバポレーターに新車から3年で穴が開きガスがすべて抜けてしまうなど、どう考えても不良品としか思えないようなトラブルが普通に起きていたのがバブル時代の欧州車のエアコン。要となるコンプレッサーは日本やアメリカのメーカーによるものを使っているのに、どうしてこうも壊れるかと思うほど手間がかかったものだ。
とくにガス漏れが多く、まずホースを交換して、次にエバポレーター、さらにコンプレッサーがダメになり、最後はコンデンサーという具合に、直しても直しても次々と壊れるモグラ叩き状態も珍しくなかった。
これには理由があって、ある部分を修理してガス圧が正常になると他の弱った部分から漏れたり、壊れたコンプレッサーの破片が冷媒系に回ったままの状態で新しいものを取り付けてしまい、すぐまた壊れるといったケースが多かった。
現在では冷媒系をキッチリと洗浄することが定着したり、部品の精度も高くなったため昔のようにモグラを叩き続ける必要はなくなっているが、やはり長く乗ろうと考えているならば冷媒系を全交換するくらいの覚悟で一度キッチリと手を入れておくことが大切。その場しのぎのエアコン修理は、結局のところエアコンガス代ばかりがかかって良いことは何もない、というのが昔も今も変わらずに言える。ホースなどについては、日本製を使ってワンオフで作った方が安いことも多いようだ。