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30年落ち車の信頼性回復メンテ〜重要ポイント別解説〜Part.01

V12でもプラグコードを使用していたクラシック世代の多気筒ユニット。複雑な取り回しを持つ長いプラグコードは、定番のメンテポイント。ディスビキャップとローターの点検と交換など、点火系の細かな手入れが欠かせない世代だ。

重要ポイント→多気筒エンジンでもプラグコード式

劣化する前に交換してやることがエンジンを快調に保つツボ

BMW、メルセデスと相次いでV12ユニットが誕生したバブル時代。通常のモデルも4気筒よりは6気筒、6気筒よりは8気筒とマルチシリンダー化が進んだが、点火系はまだ回転式のディストリビューターを使ったものが一般的だった。

 これはキャップの内部で非接触式のローターが回転して、キャップ側の放電ポイントに点火電流のスパークを飛ばすというもので、キャップから先はハイテンションコードと呼ばれる高圧電線でプラグまでデリバリーされる。

 高圧に引き上げられた点火電流をプラグコードで長々と運ぶこの方式は決して効率の良いものではなく、その後90年代にはイグニッションコイル自体をプラグの上部に複数セットするダイレクト式イグニッションが主流となった。

 プラグコードは熱による劣化が進むと電流のリークを起こすことがあり、点火スパークが不安定になりエンジン不調の原因となる。またディスビキャップとローターの放電ポイントにはスパークによる結晶が付着しやすく、これを紙ヤスリなどで削り落としてしまうと端子間のギャップが狂ってしまい余計にエンジンが不調となることも。いずれも定期的な交換が欠かせないパーツだ。

 さらにディスビキャップには防湿のためのゴムパッキンが使用されていて、これが劣化すると内部に湿気が溜まって結露が発生し、エンジンがぐずってしまうトラブルも少なくない。いかにも簡単な問題だが、その原因を知ってこまめに手入れしてやることが大切なのである。

●●●V8ユニットのディスビには9本ものプラグコードが所狭しと繋がっている。BMWでは12気筒ユニットもプラグコード式だったし、ポルシェの964タイプでは6気筒ながらツインスパークの採用でディスビが2つ存在し、プラグコードも複雑な取り回しに。バブル時代のクルマはプラグコード代がかかる。

重要ポイント→コネクターの防水が不完全なので要注意

リサイクル素材に切り替わる前の配線被覆は非常に丈夫で、交換や引き直しとなるケースはまずないが、コネクターが錆び付いて熱を持ちハーネスもろとも溶かしてしまうトラブルには要注意。防水コネクターではないので、湿気が大敵だ。

配線の保護被覆にリサイクル素材を用いるようになった90年代中頃以降のモデルのように、配線が溶けるというトラブルはないものの、コネクターの防水能力が低いのがバブル世代の泣き所。太いピンを使った頑丈なコネクターが主流だが、錆びてしまっては意味がない。接点の状態を時々チェックすることが大切だ。

せっかく丈夫なハーネスの被覆もコネクターが錆びてダメージが及ぶ

リレーを用いたアナログの配線が使用されているバブル時代のクルマ達。CANネットワークを用いたスマート配線ではなく、多くの線には動力となる大きな電流が直接ON/OFFされる形で流されている。ドイツ車に使用されているコネクターは端子が大きく、通常の使用で熱を持ち溶けるようなことはないが、防水性能が低いのが難点。その後は防水コネクターが標準的に使用されるようになったが、バブル時代のモデルは水気が入ると錆びが発生して接触不良を起こし、作動不良や発熱によってコネクターの樹脂部分が溶けてしまうトラブルもある。

 これを防ぐためには、定期的にコネクターを点検して汚れや錆びを落とし、接点保護用のグリスやスプレーなどを吹き付けておくことが大切。コネクター部分だけの問題であれば付け直すことで修理可能だが、配線の被覆まで溶けてしまうと引き直す必要があるため修理は大がかりなものになってしまう。

 リサイクル素材を使用した90年代中頃以降のハーネスのように被覆のビニール素材が弱いということはなく、トラブルの熱によって溶けてしまうようなことがなければハーネスを交換したり引き直したりというケースはまずないので、その意味でもコネクターに気を配っておくことが大切だ。

 リレーやヒューズボックスの接点が劣化して熱を持ち内部を溶かしてしまうこともあるので、こういった部分も2年に1度くらいはヒューズやリレーを取り外して接点部分を手入れしておきたい。