The world of ALPINA
ドイツのバイエルン州で、事務機器の製造・販売を行なっていたのがアルピナ。その創業者の息子であるブルカルト・ボーフェンジーペンが、愛車のBMW1500に、ツインウェーバーキャブを装着したことから、アルピナとBMWの関係はスタートする。BMWの4気筒ユニットとウェーバーキャブ×2、さらにそのセッティングの巧みさから、ブルカルト・ボーフェンジーペンが手掛けるBMWは高い評価を得て、1964年にはBMW社公認チューナーとなる。同時に、BMWの保証も受けられるチューニングとして、その名を世界に轟かせるまでに至った。そんなアルピナのヒストリーは、実はエンブレムにも記されており、ツインチョークウェーバーのファンネル(赤側)とクランクシャフト(青側)があしらわれている。
アルピナの名が一躍有名になったのは、やはり1970年のモータースポーツシーンにおいてだ。欧州ツーリングカー選手権やドイツ国内でのツーリングカー選手権で大活躍したことで、アルピナというチューニングメーカーの名は一気に世界へ広がった。モータースポーツで活躍していた一方で、市販車の趣きは、チューニングカーから高級かつ上品なGTカーという路線へと変わっていく。それを顕著に示すシステムが、92年にアルピナが自社開発したセミATのシフトトロニックだ。翌年にはMTモード付きのスイッチトロニックを登場させるなど、この分野では本家BMWよりも先を行っていた。それと同時に、優れた高速安定性を追求しながら、しなやかな足回りを追い求めてきたこともアルピナの特長のひとつ。BMWがMシリーズをリリースして以降、アルピナは単なるスポーティサルーンに留まらず、より上品なハイパフォーマンスサルーンとしての地位を確立していった。結果として、プレミアム感を押し上げることにも成功し、Mシリーズとの棲み分けもうまくいっている。しかし、今なお年間の生産台数は1500台前後と、量産車と呼ぶにはあまりにも少ないため、中古車の流通量も常にタマ不足という状況が続いている。これはアルピナの弱点なのかもしれないが、でも、オーナーからすれば希少なモデルというプレミアム性をいつの時代も味わえることに繋がっている。
5シリーズ(E60)をベースとしたモデルで、アルピナではB10の後継にあたる。最大の特徴は、4.4ℓのV8にラジアルコンプレッサーを追加し、510psという高出力を得ていること。
2006y ALPINA B3S COUPE (E46)
3シリーズのクーペモデルがベースで、3.4Lの直6を搭載。E46ベースのB3Sとしては最後期にあたる希少なモデルであり、NAの直6を搭載する最後のアルピナでもある。