ALPINA B10 Bi-Turbo
ビッグシックスをターボ化
異次元の走りを実現
ビッグシックスに組み合わされるタービンは、ギャレット製のT25をツインで装着。シングルターボより低い回転域から豊かなトルクが湧き出し、そのままトップエンドまで維持することによって無理のない高出力化を実現している。パワースペックもB7Sターボの330psさえも凌駕する370psと直6ユニットとしては強烈だが、その走りはまるで異次元の世界だ。
重量のあるE34のボディだけあって、走り始めの一転がりはゆったりとした感触だが、そこから一瞬にして豪快な力強さに満たされていくのである。ファイナルを極端に高めていることに加え、ツインターボ化やシャシーの強化でノンターボのB10 3.5よりさらに150㎏は重くなっていることも、この独特なフィールを生んでいるのだろう。強靱なボディによるカタマリ感と暴力的な加速は、このクルマだけがもつ強烈に個性的な乗り味。乗りやすく、恐ろしく速いというキャラクターはMTさえ操れれば誰でも乗りこなせるという反面、あまりにもあっけなく非日常的な速度まで加速していく様に空恐ろしさすら感じてしまう。強化されているクラッチも極端な重さではなく、ミートに気を使うこともない。ガッチリとしたペダルやシフトのフィールは、ドイツ車好きならば好感を持つに違いない。
多くのカーマニアを釘付けにした最速のサルーンには、25%のリミテッドスリップデフとゲトラグ製の5速ミッションに加え、リアにはBOGE製のレベライザーショックが装備されている。メーターの下部には吸気圧や油温などを表示するデジタルコクピット・インジケーター、センターコンソールにはブースト圧をコントロール可能なツマミも用意し、さりげない出で立ちながらスペシャル感が詰まっている。スピードメーターは320㎞/hまで刻まれているが、290㎞/hの最高速度を考えると、確かにアルピナの通常仕様である300㎞/hスケールでは不安がある。スーパーカー級の性能を備えた普通のサルーン。どこまでも通好みな一台だ。
もちろん維持に関してもスーパーカー級で、アルピナ製の専用パーツを随所に用いたエンジンは部品代の高さに悩まされる。例えばショック一式で約100万円だ。ただ、供給面に関しては今や並のE34よりよっぽど安心というのが、アルピナの素晴らしさでもある。そのあたりもアルピナがチューニングメーカーではなく、自動車メーカーであると言われる一端だろう。
V8にツインターボを備えたB7のBi-Turboも09年に登場しているが、最新の電子デバイスを用いたハイパフォーマンスカーでは同じ速度で走っていても感動が薄い。アルピナにしか作れなかったスーパーサルーン、それがたった507台しか存在しない、このモデルの魅力なのだ。
Specifications B10 Bi-Turbo
全長…4748㎜
全幅…1750㎜
全高…1397㎜
ホイールベース…2761㎜
トレッド前/後…1482/1479㎜
車両重量…1695kg
エンジン方式…直6SOHC+T×2
総排気量…3430㏄
ボア×ストローク…92.0×86.0
最高出力…370ps/6000rpm
最大トルク…53.0kg-m/4000rpm
0→100km/h加速…5.2秒
タイヤサイズ 前…235/45VR17
後…265/45VR17
新車時価格…1680万円