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【 GERMAN SPECIAL CARS!! vol.21 至福の時間を特別なクルマで。/ファンを魅了するアルピナマジックの極み ALPINA B9 3.5coupe(E24) 】

街のチューニングショップから独立した自動車メーカーまで登りつめたアルピナ。現在ではBMWに吸収される形となってしまったが、過去のモデルを遡れば、個性的でスペシャルなモデルを見つけることができる。世界一美しいクーペであるE24をベースにしたB9 3.5クーペ見ながら、そのヒストリーを辿っていく。

 

The history of ALPINA
ALPINA B9 3.5coupe(E24)

逆スラントノーズと長いボンネットはこの時代だからこそできたデザイン。専用スポイラーによって迫力あるフロントマスクとなっている。
E24ファンにとってはリアからのスタイルが堪らないはず。アルピナパーツを組み込むことで、ノーマルとはまた違った雰囲気を醸し出す。
 

時代の変化に合わせて
進化を続けてきた
アルピナのチューニング

 アルピナの歴史は、今では信じられないような幸運によってスタートする。父親の経営するタイプライターなどを製造する工場の片隅で、自分のクルマをイジる息子。そんなどこにでもある風景から、長い月日を経た現在、世界中にファンを持つ自動車メーカーが誕生したのだった。
 BMW1500に組み付けられた2基のダブルチョーク式ウェーバー製キャブレターには、短いインテークマニホールドとスムーズに研磨されたエアファンネル、そして湿式のエアクリーナーが装着されていた。このキャブレターキットによって、たった1499㏄の80psエンジンは、0→100㎞/h加速13.1秒、最高速度160㎞/hという性能を発揮するまでに高められていた。これが近所の話題となり、ついにはBMWの重要人物の耳にまで届く。そして3年後には、彼がチューニングしたBMW車に対して、メーカー保障を与えようということになったのだ。翌年の初めには、チューナーとしてのアルピナ合資会社が設立された。まさにトントン拍子である。
 どんなに実力があってもチャンスに恵まれない人が多い世の中にあって、まさに実力だけでなく運を味方につけたアルピナの創始者ボーフェンジーペン。その後のアルピナ社の歴史を見ても、そこで作り出されるクルマ達もまるで神懸かっている。レースを次々と圧巻し、10年を転機に公道を走るクルマの生産に専念すると発表、登場したB7ターボは300psのモンスターマシンであり、世界で最も速いサルーンとなった。やることがカッコ良すぎるじゃないか、アルピナ!
 その後もスチール製キャタライザーキャリアを実用化したり、スイッチトロニックを開発したりと、自動車産業界にも小さなメーカーとは思えないような貢献を果たす。
 そんな実力派のアルピナだからこそ、それぞれの時代にクルマがどうあるべきか、ユーザーは何を求めているのかをよく理解しているのだろう。E34ボディのB10ビ・ターボ以来、圧倒的なスーパーパフォーマンスを発揮するクルマからは遠ざかっている。
 それゆえ近年では、上品でちょっと洒落た高級なBMW、というイメージが定着しているようだ。しかしそれはAMGのように経営的な都合で押し付けられたものではなく、自ら選んだ道。だからアルピナは、その気になればいつでも世の中がぶったまげるようなモンスターを作ることができるのも事実だろう。
 E46やE39以降のアルピナは過激なメカニカルチューニングというよりは、落ち着いた大人のセダンといったフィーリングになり、さらにそれ以降になると過給器を使ってハイパフォーマンスを発揮するような方向へと変わっていく。
 いずれにしても時代によって求められるニーズをしっかりと掴んで、アルピナの個性として高い完成度を誇っていることに変わりはない。

B9 3.5クーペに搭載されるエンジンは名機ビッグシックス。633iの3210ccユニットをベースにMAHLE製のハイコンプレッションピストンを組み込み3430ccにスケールアップ、ハイカムとの組み合わせでベースモデルの180psに対して245psを絞り出す。
クラシカルな雰囲気の中にも、BMWらしいスポーティさを感じるインテリア。ミッションはZF製の4速ATを搭載している。ステアリングにはアルピナ専用品を奢っている。
シンプルなようでいて複雑な形状を持つミラー。アルピナのデコラインが存在感をアピールする。
センターキャップにはアルピナのロゴマークが誇らしげに装着される