BMW 2002turbo
多くのクルマ好きを魅了した
過激なルックスと
ターボエンジンへの憧れ
1973年5月、フランクフルト・モーターショーで発表され2002ターボ。フロント側はマクファーソンストトラッド式、リア側にセミトレーリングアーム式と骨格や足回りは共通ながら、アンチロールバーで強化スプリングを採用。さらにビルシュタインサスペンションを標準装備するなど、ターボに相応しいアップデートが施され、リアアクスルにはリミテッドスリップ・デフが与まれてファイナルレシオもtiiの3.64:1から3.36:1へ。鋭い加速感を獲るべく4気筒エンジンの圧縮比9.5:1から8.5:1へ変更。排気量こそ1990ccと変わらないが、ラジエターやオイルクーラーをターボ専用品に換装するなど、その名に相応しい装備が際立つ2002ターボ。
しかし、こうした数値的なスペックよりも直感的な「その気にさせる」という気持ちの高揚こそ2002ターボの魅力だと語る、シンプルオート代表の吉田氏。ザックリ言えば細かい変更はあっても、骨格や足は2002tiiとそう変わらない。それでいてシングルの2倍近くのパワーを持ち合わせる。そのパフォーマンスに耐えうるべくフロントブレーキのベンチレーテッドのディスクブレーキや、リアドラムの大径化と容量アップによる制動力強化も実施している。
何より魅力的なのはレカロ社が開発に携わった専用スポーツシートに着座したときだ。純正スポーツステアリングを握り、赤いメーターパネル越しの景色を見ながらイグニッションキーをオンにした瞬間の昂る気持ちこそ、2002ターボが持つ高揚感なのである。
もちろんオーバーフェンダーやフロントスポイラー、そしてデカールによる視覚効果も2002ターボを象徴する特徴だ。当時流行していたハコスカやケンメリにも共通する外せない存在ではあるが、ドライバーにとってみればエクステリアからの印象よりも、コクピットからドライバーへダイレクトに伝わってくる「操る喜び」のさらに上を行く、「その気にさせる」高揚感にこそ2002ターボの真の魅力がある。
37年間クラシックBMWに精通し、A級ライセンスを取得してレースに励んできた過去を持ち、仕事柄セーフティドライブに徹するシンプルオートの吉田氏が、人生で2回だけスピード違反で捕まったことがあるという。そのどちらも2002ターボのステアリングを握り、納車や試乗テストを行なっていた時だったそうだ。
五感をフルに刺激してくれる2002ターボは、馬力やトルクなどの数値では計り知れない直感的な魅力に溢れており、だからこそ半世紀を迎えた現在も多くのクラシックBMWファンを魅了し続け、記憶に残る名車として語り継がれているのである。