代表的なグループAのレギュレーション
モータースポーツとブリスターフェンダーの関わりは深い。加えて言うなら、自動車メーカーがワークスとして参戦する競技で、しかもその競技の車両規則にボディ外板への変更が認められないという車両規則があり、なおかつ市販車として一定の台数が市販された車両であることが条件になるとすれば、そこに登場するモデルがブリスターフェンダーを備える可能性は極めて高くなる。
なぜならば、車両の改造が認められない以上、ワイドトレッドボディを備えた市販車を製作しなければならず、その台数が数台とかいう少数でなく数百台以上の規模になると、メーカーとしても張りぼてのオーバーフェンダーで世の中に出しにくくなる。新たにブリスターフェンダーを打ち抜くプレス型を作ることになり、製造コストは掛かるが、数百台の販売が見込めれば、やや高めの車両代金をユーザーに負担してもらう格好にはなるが、それも不可能ではない。けれどもその程度の台数では、一から全体のデザインをやり直すという時間もコストもかけられない。
だからブリスターフェンダーは、そのような条件のモータースポーツに参戦するメーカーにはうってつけのボディワークであり、また他に採るべき方法がない唯一の方法ともいえるのだ。
そのような条件に合致する競技といえば、もっとも代表的なのがグループAというレギュレーションの下で戦われるツーリングカーレースやラリーである。そして80〜90年代は、グループA車両によるレースやラリーがもっとも流行った時期でもあった。BMW・E30型M3やアウディ・クワトロスポーツなどの、ザ・ブリスターフェンダーとも呼べるドイツ車が、この時期に続々と誕生したのには、このようなモータースポーツと自動車メーカーのワークス参戦という密接な関係があったというわけだ。