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BMW

2023.03.21

【BMWメカニズム大全02/エンジン編】高い技術の裏にあるBMWのフィロソフィー

元々がエンジン屋としてスタートとしたという背景があるBMW。それだけに性能、技術への追求は世界一とも言える。そうして生み出された画期的技術を駆使して、レシプロエンジンとしては最高峰まで登り詰めたBMWだが現在の状況はどうなっているのか。最新技術も含めて解説していきたい。

 

伝統を踏襲しながらも
常に革新の技術を生み出す

ガソリンとディーゼル
ユニットの共用化

近年のBMWに搭載される直列3気筒(右)と伝統とも言える直列6気筒(左)。そして直列4気筒がメインユニットになっている。
 

 最新のパワーユニット(ここではエンジンのみ、以下同)のトピックにモジュラー化がある。これは、直列3気筒、4気筒、そして6気筒といったデザインだけではなく、ガソリン、ディーゼルで多くのパーツを「共有」していることを意味する。ガソリンとディーゼルでは圧縮比が違うだろうとか、ブロックに用いられる材質が異なるだろうとか、そんなことを言っていたのは、もう随分と前のことになる。
 お気付きのとおり、アッパークラスのモデルであっても、その質感を落とさぬままに共用によっていかにコストダウンさせていくかは、軽量化に繋がるし、それがもたらす環境性能まで考慮すると、自動車メーカーとしての命題として掲げられるのは当然のこと。先に紹介したように、ガソリンとディーゼルで共用とは随分と乱暴なと思われるかもしれないが、たとえば圧縮比ひとつをピックアップしても、ガソリンエンジンは燃費改善をもとめて高圧縮化する傾向にあり、一方、ディーゼルは環境性能を高めるために、圧縮比を下げて対応する必要があり、技術によって両者が合致したことも、その実現に寄与している。もちろん、単に圧縮比だけではない、燃焼サイクルや後処理といったさまざまな制御が可能となって、実現できたことでもあるのだが。すでにお気付きだとは思うが、現在のBMWの直列エンジンの排気量が500cc区切りであるのは、ブロックそのものをモジュラー化しているからにほかならない(3気筒は500ccのシリンダーを3つで1500cc……)。
 そして、BMWのパワーユニットには、いずれもターボチャージャーを組み合わせてダウンサイジングを実現していることもトピックとなっている(海外ブランドの多くが採用)。日常域では、排気量なりの排出ガスを発生させ、燃費効率に優れることを特徴としながら、いざという時には過給器(ターボチャージャー)によって排気量以上を感じさせるパワーを提供する。かつて、小排気量ターボは、ターボラグ(アクセルを踏み込んでからパワーが出てくるまで)が大きいことが嫌われたものだが、こまめな制御を行なえるようになったこともあり昨今のモデルからはそれは消え去り、もはやNAエンジンかのようなフィーリングを手に入れている。そして、当たり前の存在として語られなくなってしまってはいるが、スロットル損失を低減させるために採用されたバルブトロニックやダブルVANOSももちろん顕在。そして、最近では、いわゆる48Vマイルドハイブリッドユニットを組み合わせており、回生エネルギーを専用バッテリーに充電しておいて、加速が必要な際に駆動力として用いて、ターボだけに頼らないパワーフィールを実現している。

 

ターボであっても
NAのようなフィーリングを実現

3気筒エンジンの
フィーリングは魅力的

 BMWのパワーユニットはすっかり3、4気筒に制覇されたかと思いきや、ひさしぶりに直列6気筒搭載モデルに乗ってみると、そのパワーフィーリングだけではなく、エンジンの滑らかさがもたらす豊かさから、やっぱりBMWは6気筒がいちばんいいと、思い起こさせてくれる。もちろん、3、4気筒も欠点は少なく、特に3気筒においては、3シリーズに搭載されようとも、むしろフロントの軽さが引き立ち、ハンドリングにアドバンテージを感じてしまうほどだ。しかし、こうして比較すると、6気筒のあのシルキー6たるフィーリングは忘れられないものだと実感した。最近、マツダがガソリン、ディーゼルに直6ユニットを新開発したことも、そこに、代えられないなにかこだわりがあることを感じる。
 先日、BMWのEVフラッグシップたるiX、そのM60に試乗したが、BMWが目指している乗り味の集大成がそこにあることを感じた。そう、パワーフィールに関しては、シルキー6の延長上にあるフィーリングだ。滑らかさはさらに事細かに分解され、大きなパワーを発生させる一方で、日常における扱いやすさを備えており、ハンドリングや乗り心地まで含めて、腰を抜かしてしまったほどだ。まさに、内燃機関がいいと言い張っている同志は、iXに近づかないほうがいいかもしれない。
 最後に、エンジンに最新技術を採用した例をひとつ紹介しておこう。Mモデルに採用されているエンジンのシリンダーヘッドのコア部分は、なんと3Dプリントによって作られている。
 生産コストは定かではないが、これまでの鋳造技術では製作できなかった複雑な幾何学的な形状をデザインすることができ、さらにユニットの軽量化はもちろん、クーラントダクトの配置も可能としている。そう、3Dプリンタの技術は、エンジンに応用されるまでになっているのだ。

 右は世界で初めてBMWが実用化した可変バルブ機構であるバルブトロニック。これはスロットルを廃止して吸気バルブのみで吸気量をコントロールするシステムだ。従来のカムシャフトとは別に、電気モーターで駆動するエキセントリックシャフトがあり、吸気バルブが開いた時期を連続的に可変させることで、吸気用のカムではコントロールできないバルブの動きを電動で調整している。当初は4気筒エンジンのみに採用されていたが、現在では直列6気筒やV型8気筒にも搭載。熟成の域に入ったBMW自慢の技術である。
 左はダブルVANOSとは連続可変バルブタイミング機構で、アクセルの開度やエンジンの回転数に応じて、吸気と排気のバルブタイミングを無段階に調整するもの。たとえば低速域ではバルブの開く時間を遅らせて安定したアイドリングを実現し、中速域では逆にバルブの開きを早めて、高いトルクを発揮、そして高速域では再びバルブの開く時期を遅らせてフルパワーを発揮するのだ。このシステムはコンピュータによって制御されている。